北隠和尚、侍者の尼僧に言う。
「長いこと厄介をかけたがもう今年のお盆あたりにはお暇しようか」
尼僧「隠居さん、死ぬんですか?」
和尚「そうじゃ」
尼僧「それなら忙しいお盆なんかに逝かれちゃ困ります、みんな難儀します。」
和尚「そうか。 そんならいっそ今日にしようか。」
尼僧「それは急すぎます。」
和尚「では明日にしよう。」
こんな会話、尼僧は本気にしてはいない。ところが北隠和尚はすっかり本気。
「明日正午、お暇致し候に付き、御見届け下されたし、云々・・・」と旧友知己に知らせてしまう。
当日、和尚は身を清め木綿の白衣に麻の涅槃衣で端坐し、
太閤記の浄瑠璃を吟じているうちに静かになる。
尼僧「隠居さん!隠居さん!」
和尚・・・・ 端坐したまま大往生
「世の中は喰うて稼いで寝て起きて、さてその後は死ぬるばかりぞ」一休