道元禅師は、中国での経験を生かし、実際の
修行について、非常に詳しくその作法を定めた。
入浴・お手洗いなどの時も普通の会話は禁じられ
厳粛に行う。朝起きてから顔を洗うときの作法や
夜眠るときの作法、廊下で誰かとすれ違った時の
作法に至るまで、全て厳しく定められている。
修行を始めたばかりの若輩僧は、この作法を厳守
するのが大変だそうだ。しかし次第に身に付くと、
かえってこの作法こそが【 無駄を省いた動作で
最も美しい振舞いである 】と気づくそうだ。
典座教訓(てんぞきょうくん)
道元禅師のおしえの中で、他の宗派にはないものが、
寺の料理係の作法や心構えを説いた「典座教訓」。
禅寺では、料理係の責任者を典座(てんぞ)と言う。
典座教訓では、献立の立て方、お米のとぎ方、野菜
の扱い方、調理と味付の方法まで詳しく定められる。
また、食事を頂くときの作法については、(次頁で)
「赴粥飯法」という書物に定められている。
典座教訓に書かれている内容は、料理の味付についての
具体的なレシピや方法ではなく、もっと根本的な、食材
を調理するにあたっての心構えに重点が置かれている。
たとえば、お米を研ぐには、桶に穴があいていないかを
確認し、水は最小限にし、研ぎながら異物が混じって
いないかよく見て、また研ぎ汁も無駄に捨てずに洗い物
などに使いなさい。等詳細な心構えが記述されている。
その他の事についても全て細かく決められている。
良い材料が無いといって手を抜いたり、良い材料だから
と張り切ったりしてはいけない。たとえ道端の草しか
材料がないときでも、工夫をこらして、心を込めて
調理しなくてはいけない。常に工夫とこころを忘れては
ならないと説くとともに、いただく側も、高級だ、
粗末だと選り好みしてはいけないと説いている。
コインをガチャン・ポン・チンでレトルト食品の
スピーディな現代に「そんな事を言ってたら手間
がかかって仕方ない」と思うだろう。が、しかし
その手間を惜しまない心こそ、 単なる料理から
仏様や修行僧をおもてなしする【精進料理】へと
食材が変っていく、 重要なこころなのだ。
このくらいにして、次は赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)。
野狐禅の洋彰庵 ここでひるんではいけない。 赴粥飯法へ続く